アスカは自分の言葉を訂正することもなく、口を噤んだまま兄の顔を見ていた。




「そうなのか、アスカ………」




再びクオンに問われ、アスカは唇を湿らせてから、言う。




「ーーーそうだよ。


俺はずっと、そう思ってた」




一言一言区切るように、そこに含まれる意味を確かめるように、ゆっくりと語った。



クオンはさらに目を大きく開く。



その後に、眉間に皺を集め、目を細めた。




苦し気に歪み始めた兄の顔を見ながら、アスカも同じように顔を歪めた。





呟くような声で、さらに続ける。




「俺は、二人の婚約を、祝福したことなんて無い。


ずっとずっと、やめればいいのにって、思ってた………」




アスカは目を伏せた。



癖のある長めの前髪に隠され、その表情は見えなくなった。




それでもクオンは、その真意を図ろうと、じっと凝視し続ける。