「なぁ、アスカ。分かってくれ。


私たちの婚約が公に知らされてから初めての、皇室主催の宴なんだ。


天貴人たちの気持ちも、分かるだろ?」




アスカは八重歯を覗かせながら下唇を噛み締め、しばらく俯いていた。



握り締めた拳が小刻みに震え、だんだんと白くなっていくのを、クオンは黙って見ている。




暫くの気まずい沈黙の後、アスカが唐突に口を開いた。




「婚約発表のせいで、ミカゲが無理してまで宴なんかに出なきゃいけないなら、………結婚なんて、やめちゃえばいいんだ!!」





思いも寄らぬ言葉だった。




クオンは驚きに目を瞠る。





そして、絞り出すように言った。




「アスカ………お前………」






明々と揺れる燭台の灯りに横顔を照らされながら、二人は見つめ合った。





「お前、私たちのことを、そんな風に思ってたのか………」




クオンは、弟の心の奥深くに隠されていた想いに、初めて触れたように感じた。