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ミカゲの熱がやっと下がって、クオンは安堵していた。
昨日の夕餉前、部屋まで顔を見に行った時には、まだ少し気怠げな様子だったが、寝台から立って長椅子に座り、普通に会話をすることができた。
三日後には、天皇が主催し、主だった天貴人たちを招く宴が予定されている。
病み上がりのミカゲにはまだ負担が大きいだろうと、クオンは参加させない方が良いと奏上した。
しかし天皇は心配そうな表情をしながらも、「皇太子の婚約を祝う宴でもあるのだから、心待ちにしている天貴人たちのためにも、臨席させぬわけにはいかぬ」と断言し、クオンの進言は聞き入れてもらえなかった。
皇室領の空島から献上された霞の量を記した巻物を閲覧していたクオンは、政務の手を止めて深々と息を吐く。
一月以上も病に伏せっていたのに、いきなり公の場で大勢の前に出ても大丈夫だろうか。
また倒れたりしたら、どうしようか。
ミカゲの体調が不安な余り、天貴人たちの顔色を窺って思い切った決断のできない父皇まで恨めしく思ってしまうクオンだった。



