「なるほどな」とミチハが鼻を鳴らした。



顎鬚から手を離し、床に転がる男の顔を凝視する。




「…………うむ。


地国では、滅多に争い事がない。

武器を持ったこともない人間がほとんどだという。


その地国の者で、珍しいことに高い戦闘力を持つということは………」




「はい、左様でございます」




オナガが含みを持った笑みで主人を見つめ返す。




ミチハはにんまりと笑って、部屋に集った兵士たちをゆっくりと見渡した。




「ーーーふん。

お前たち、命拾いしたな。


我が積年の願いを託されておいて、その最大かつ最重要の任務に失敗したというのに………。


この男に、感謝しろよ」




「ははぁ!!

ご寛大な御処置、誠にありがたく存じます!!」




オナガを中心として、男たちは一斉に拝礼した。





「しかし、気を緩めるなよ!

これから、なんとか『エーテル』をソガノから取り戻さねばならぬ………。


まず、ソガノ家の住む区画のどこに、人間を軟禁できる………匿えるような場所があるのか、調べて来い!!」




鋭いミチハの声に、兵たちは蜘蛛の子を散らすように駆け出した。