ミチハは苛立ちを抑えつつ顎鬚を弄りながら、目の前に揃って膝まづいている兵団の報告を聞いていた。




言い訳まじりの、しどろもどろの報告だ。




「………それで、人数で勝るムラノの軍勢には敵わず、あえなくその場を去らざるを得ませんでした………」




ミチハは、兵団の全員に聞こえるよう、わざとらしく大きな溜息を吐いた。





「せっかく、ソガノの配下が『エーテル』らしき少女を見つけたという情報が手に入って、あちらが再び見つける前にと、急いで地国に降りさせたのに………。


全く、長年の苦労を見事に水の泡にしてくれたことよ………」




兵たちは皆黙って頭を垂れた。






しかし、頬に大きな古い裂傷の痕を持つオナガが、顔を上げて口を切る。




「畏れ多くも、ミチハ様。


今回の遠征は、全く収穫がなかったわけでもございません」




自信あり気な声に、ミチハは片眉を吊り上げた。



「なんだ。申してみよ」