天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether








宿屋の入り口に着くと、ヘレンは兄と妹を外で待たせて、借りている部屋へと向かった。





大きく深呼吸をしてから、そっと扉を押し開ける。




すると、窓辺の椅子に腰掛けて外を眺めていたセカイが、頬を緩ませながらゆっくりと振り向いた。





「………おかえり、ヘレン」





その声はやはりヘレンの耳に、柔らかく優しく甘く響いたが、ヘレンの心はもう揺らぐことはなかった。





年季の入ったランプが、出窓に置いてある。



風にちらちらと揺れる火が、セカイの姿を幻想的に照らしていた。




ヘレンは一度目を閉じてから、セカイを真っ直ぐに見つめる。





「………セカイ。


さっきは、ごめんなさい」





「ーーーなんのこと?


僕、謝られるようなこと、されたっけ?」





セカイは首を傾げたが、その目許は少し可笑しそうに、穏やかに細められている。



ヘレンはその優しさに感謝した。