天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

ヘレンの声は小さく控え目だったが、容易には変えがたいような強さを感じさせた。




それでもセカイは、言わずにはいられない。





「………ねぇ、ヘレン。


僕は、救いの主なんかじゃないよ」





ヘレンは顔を歪めてセカイを見る。



セカイは真っ直ぐにヘレンと目を合わせながら、なおも続けた。





「僕は、そんなのじゃない。


それは、ヘレンの幻想だよ。



僕は、ただの、15歳の男の子だよ。

特別な力なんて、なに一つ持ってない」






「そんな……違うわ、幻想なんて………」






ヘレンの声は、今にも泣きそうに掠れていた。




嗚咽を堪えるように、唾を飲み込む。





それでも、セカイは優しい表情で、さらに言葉を紡いだ。