天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「よし、じゃあ………。


海に入れないセカイの代わりに、あたしが何か獲ってきてあげる」





ヘレンはそう言って、すくりと立ち上がる。




荷物の中から薄手の短い服を探し出し、岩陰で手早く着替えると、そのまま海へと飛び込んだ。




人間二人分くらいの高さがあるにも関わらず、ヘレンの飛び込みには躊躇いも迷いもない。




身体を真っ直ぐに伸ばし、一つの線となって滑らかに水に入ったので、飛沫はほとんど立たなかった。






「ヘレン、すごぉい………」





セカイは珍しく目を丸くして、目で追った。




そんな声も聞こえるはずはなく、ヘレンは身体をしならせて、深く深く海の底へと潜って行く。




崖の上から見ているセカイの目には、ヘレンがどこにいるのかも見えなくなってしまった。