ヘレンが目を伏せるのを、ハンナは眉間に深く皺を刻んで見つめた。





「………違うよ、ヘレン。


私が言った災いとは、そんなことじゃないんだよ」





「え?」





ヘレンは目を上げ、ハンナの顔を窺う。



その顔は、ひどく悲しそうだった。





(どうして、ハンナ婆さんが、そんなに悲しそうな顔をするの?)




ハンナは苦痛に歪んだような目つきで、ヘレンが抱えている荷物をじっと凝視している。




しかし、それ以上なにか声をかけてくることはなかった。






「―――じゃあ、あたし、行きます。


さようなら、ハンナ婆さん」






ヘレンはそう言って、ハンナの傍らを通り過ぎる。





ハンナは目許を歪めながら、ヘレンを見送った。