天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

ヘレンは夜道を小走りで行った。



両腕で大きな荷物を抱えながら、漁師小屋へと急ぐ。




そこに、嗄れた声が聞こえてきた。





「ーーーヘレン」





抱えている荷物の隙間から、声の聞こえてきた方向に、視線を送る。




ハンナだった。





「………こんばんは」





ヘレンは小さく言った。




ハンナは何も言わず、ただじっとヘレンを見つめている。



ヘレンも仕方なく、黙って見つめ返す。





木蔭の濃い闇の中に佇むハンナの姿は、夜に溶け込んでしまいそうだった。





「………あの、ハンナ婆さん。


ごめんなさい、あたし、急いでるんです。


ご用が特にないなら、失礼します」





ヘレンは囁くように言った。