天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「兄さん!


………詳しい事情は言えないけど。

今すぐにセカイを村から逃がさなきゃいけなくなったの。


あたし、今から荷物をまとめて、港町まで行くわ」





「な、なんだって!? 」





パトロは驚きに目を瞠った。



読んでいた本を放り出すように手離し、ヘレンの側に駆け寄る。




その肩を掴んで大声で言った。





「ちょ、ちょっと待て、ヘレン!!


どういうことか、ちゃんと話せ!!」




しかしヘレンは首を横に振る。




「とにかく、時間がないの!


話してる時間がもったいないの。


急がなきゃ、セカイが大変なことに……。


お父さんやお母さんには、上手いこと言っといて。


兄さん、お願い!」






ヘレンは手を合わせて、兄を窺った。



パトロは戸惑ったように口をぱくぱくさせている。