天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「…………どうだ?」



タツノに訊ねられ、薬師はすっと手を引き出しながら答える。




「脈拍が少し速うございますが、お熱はございません。


しばらくすれば、お身体が慣れてきて回復なさると思いますが………」




「………そうか。ならばよかった。


胸が、痛いと言っていたが………」





薬師はチキュの青い顔に目を向けた。




「それは、もっと詳しくお調べしなければ、分かりません。


なにか胸に病をお持ちか、あるいは、………お心に何か、お苦しみの種を抱えておられるのか………」




薬師がふいと視線を動かし、少し離れた所にある文机の脚下に散らばる衣服を見た。




タツノもそれに気がつき、そうか、と納得する。




「心当たりは、なくもない。


時間が、かかるかも知れないな………」





タツノは独りごちる。



薬師はそれを聞いて頷いた。




「そうですか。承知いたしました。


とにかく、ご気分の楽になるようなお薬を調合して参りましょう」