天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

そこに、扉を数回叩く音がした。



振り返り、「いいぞ」と言うと、サヤが薬師を連れて入室してきた。




「タツノ様。姫さまのご様子は………」



サヤが心配そうに声をかけてくる。



タツノは黙って視線でチキュを示した。





依然つらそうに横たわっているチキュを見て、サヤは心配気に両手を組んだ。





薬師が静かに歩み寄ってくる。





「ご無礼いたします」



そう言って、チキュの枕元に腰かける。





いくら薬師とはいえ、天貴人の奥方の身体に、直接触れることは許されない。



夜着の中にそっと手を差し入れて、体温と脈拍を測るのだ。





薬師はしばらく手を差し入れたまま、険しい表情をしていた。