小さく呟いたヘレンは、再び俯いた。




「ーーー兄さん………」




聞き取れないほど小さな声で呼ばれ、パトロは「ん?」と優しく訊き返す。




「あたし………もう嫌だわ………」



「………え? 何が?」




パトロは首を傾げた。



ヘレンはさらに続ける。




「あたし、こんな所、もう嫌。

こんな村……こんな家……もう嫌なの」




「ヘレン………」




パトロは驚いて目を剥き、それ以上何も言えなかった。





「兄さん………あたし、ここを出たい。


ここを出るわ………。


セカイが治ったらーーー」





ヘレンの瞳には、決意の光が宿っていた。




「ちょ、ちょっと待て、ヘレン!」




パトロは慌ててヘレンの肩を掴んだ。