天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

足を踏み入れると、タツノが見初めた少女が床に転がっていた。



唇をきつく噛み締め、胸を強く抑えている。





タツノはかつかつと歩み寄り、傍らに静かに座り込んだ。




「………どうした。苦しいか」





チキュはゆっくりと瞼を上げ、タツノを見た。




渇いた唇を薄く開け、何度か動かす。




「息、くるし………。


………胸が、いたいーーー」




掠れきった痛々しい声だった。





タツノが前髪を払ってやると、その額には真珠のような汗の玉がびっしりと浮かんでいた。



蒼白な顔に伝う脂汗を、袖口でそっと拭ってやる。





うっすらと見開かれた深い漆黒の瞳には、何も映っていないようだ。



空虚な双眸を縁取る濃い睫毛に、透明の涙が滲んでいた。