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小屋の戸を後ろ手に閉め、ヘレンは歩き始める。
いつの間にか、日が暮れかけていた。
夜の気配を含んだ、すこし冷たい風が吹き抜けていく。
間断なく波の打ち寄せる浜辺で、あかあかと火を焚いて暖を取る海女たちを横目に見ながら、ヘレンは急ぎ足で家へ向かった。
潮風に晒されて傷んだ板戸を押し開ける。
顔を覗かせた瞬間、一番目と二番目の弟二人が駆け寄ってきた。
「ねーちゃーんっ!!
どこ行ってたんだよ!?」
「今日は一緒に裏山に虫捕りに行く約束だったじゃないかっ!!」
「そーだよっ!!
オレたちずっとねーちゃんが帰ってくるの待ってたんだぞ!!」
「こんな時間になっちゃったら、もう外に出れないじゃないか!!」
弟たちは、ヘレンの周りを纏わりつくように駆け回り、口々に文句を言った。
(………あぁ、そうだったわ。
この子たちと約束してたんだった。
すっかり忘れてた………)
さすがに申し訳なくなり、ヘレンは「ごめんごめん」と謝った。



