天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「その怪我人は、早く………この村から、出て行ってもらったほうがいい」





皺に埋れた細い瞼の奥の、深い闇をたたえた瞳が、ヘレンをじっと見つめていた。





「………え?」





ヘレンは口を開いたまま、動きを止める。





「ハンナ婆さん………。

それって、どういうことですか?」





ごくりと唾を飲み込み、ヘレンは訊ね返す。




ハンナは視線を逸らすこともなく、ヘレンの赤茶の瞳を捉え続ける。





「………そのままの意味だよ。


怪我がちゃんと治るまでは、きちんと世話をしておやり。


でも、治ったら………長居をさせてはいけない」





「ど、どうしてそんなこと………?」




ヘレンには訳が分からなかった。



しかし、ハンナは説明をしてやるつもりはない。





「理由は、知らなくてもいいんだよ。


とにかく、………災いが訪れる前に、この村を去ってもらうんだ」






切り上げるように言ったハンナは、ゆっくりと立ち上がり、「さあ、もうお帰り」とヘレンを促した。