天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

再び、二人の間に静寂が訪れた。




ヘレンはまたも気まずくなってしまい、何か話さなければと焦る。







そして、ふと思い当たって、セカイの手に目を向けた。





セカイの右の手首から先は、麻布にぐるぐる巻きにされている。




それは、その手に握られた剣を隠すためだった。






血の海の中で臥せていたセカイは、それでも血塗れの剣を強く握り締めたままだったのだ。





怖がる母親と、そんな物騒な物を誰かに見られたら困るという父親の声を受けて、ヘレンの兄がその場しのぎで手近な布を巻きつけた。





漁師小屋に移した後、勿論その剣を取り上げようとしたのだが。




ヘレンや兄がどんなに強く引っ張っても、完全に意識を失っているはずなのに、セカイの手が剣を離すことは決してなかった。




指を一本ずつ剥がそうともしてみたが、筋張るほどに硬直した拳は緩むことなく、結局は諦めたのだった。