天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

ミチハは一見穏やかな笑みを浮かべ、ミカゲに語りかける。





「………ときに、光宮さま。


皇太子妃としての最も重要な任務は、何だとお考えでしょうか」





「…………え?」






脈絡もないことを訊ねられ、ミカゲは首を傾げた。



答えがないので、ミチハはさらに言葉を重ねた。





「この天国が、これほどまでに安定しているのは、やはり皇統が安定しているからです。



たとえば、後継者争いなどが起これば………。


政は乱れ、それが天貴人の争いへと結びつき、ひいては天つ民の疲弊へ、………天国全体の混乱へと繋がっていくのです」






ミチハの声には、容赦の響きが全くなかった。




ミカゲは眼を剥き、言葉を発することなく目の前の顎鬚の男を見つめている。





その姿はやはり気高く美しく、見る者を魅了する輝きを放っていた。