天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

タツノは右の口角をくいと上げた。



チキュの耳許に口を寄せ、「大人しくしてる約束だろ?」と囁いた。




チキュは目を見開いてタツノを見上げる。



タツノはまたも囁く。





「目立ったらどうなるか知らないぞ。


とにかく黙ってろよ」




にんまりと笑いかけてチキュの頭を撫で、その顔をしっかりとヴェールで覆い直す。




天皇は仲睦まじい二人に微笑んだ。





「なかなか良い夫婦になりそうだなぁ。


よし、祝杯を上げようじゃないか」





「ありがとうございます」





やけに楽し気に天皇と盃を交わすタツノを、チキュは呆然と見ていた。






(…………………は? は?


え、オレなの?


タツノの嫁って、オレなの?)






チキュの頭の中を疑問符が駆け巡る。





(ま、まじで?


オレがタツノの嫁?



………な、なんで?


どーゆーこと?



い、いつの間にそんなことに………)







その顔が赤くなったり青くなったり白くなったりするのを、タツノはにやにや笑いながら面白おかしく眺めていた。