天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「ああ、婚約といえば」



タカハが唐突に思い出したように言う。



「どうした? タカハ」



天皇が訊ねた。



タカハはにこりと笑う。





「先ほどあちらで、若い姫君たちが話していたのですがね。


ソガノ家の後継者………タツノ殿も、先頃ご婚約されたのだとか」





それを聞き、天皇は目を瞠った。




「なに? そうだったのか。


知らなかったよ。それはめでたいな」





タカハが頷く。




「ええ。本当に。


噂によると長いこと遊び回っていたようですが、やっと腰を落ち着ける気になったんですな」





「ははは、なかなかの好き者らしいな」





「まぁ、あれだけの美男ですからな。


ああ、そういえば、その相手は今日の宴で発表するとか言ったようで、姫たちは色めき立っていましたぞ」