天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

ふとムラノが手を伸ばし、首飾りに触れてずらした。



普段は隠されている首筋を確認して、微かに頷いたようにタツノには見えた。





ムラノは腕組みをして、険しい表情を作る。





「………とにかく。


他の天貴人たちの目に触れぬように計らう必要がある。



どこに隠し置けば良いだろう………」





その言葉を耳にしたタツノは、瞳に暗い炎を灯らせた。





「ーーー父上。


ひとつ、提案があります」






ムラノは片眉を上げて息子を見た。





「……いえ、提案ではありません。


もう決めたことなのです。


却下されては困ります」





タツノの強い口調に、ムラノは多少面喰らった。




「いったい何事なんだ?」




真っ直ぐに、刺すような視線を父に投げる。








「俺は、この娘を、ーーー娶ります」