天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「へぇ〜。


で、これを鳴らせばいいのか?」





チキュが周りに倣って、腕輪を着けた手首を振ってみせる。





「お、物分りがいいな。


その通りだ」





タツノも腕輪を着け、適当に振り始めた。




着飾った天貴人たちが鳴らす、鈴の音の洪水の中、まずは天皇がゆっくりとした足取りで天庭に現れた。




創世神の子孫の気高き姿に、歓声が上がり、鈴の音が高まる。



そして、あの旋律が始まった。





数多の鈴の音が、一つの旋律に収束されていくのを、チキュは不思議な思いで聴いていた。






(ーーーなんだ、この音楽は………)





その旋律は、地国で聴いた、どんな音楽のものとも違っていた。







それなのに。





(………なんでだろう。


オレは、この旋律を、知っていた気がする………)





知識として知っているわけではない。




身体に、………血に、どうしようもなく染みついていたように思われる。






初めて感じた懐旧の情に、チキュはひどく戸惑った。





(………オレは、天国に、来たことがあるのか………?)