「………なんか、不気味な奴だな………。
あれ、誰? タツノ」
チキュが眉を顰めて訊ねてきた。
タツノはヴェールの奥から真っ直ぐにこちらに向けられた瞳を、じっと見つめる。
「中納言………ミチハだよ」
漆黒の双眸が、眦が切れてしまいそうなほどに見開かれた。
ぱっと機敏な動作で振り返り、大きく瞠目したまま、歩み去る男を目で追う。
「ーーーあれが、………ミチハ」
今にも消えてしまいそうなほどに小さく、掠れた声だった。
まだ幼さの残る頬が、ぴくりと痙攣したように見えた。
タツノの中に、不安の思いが拡がる。
(………こいつは、今、何を考えているのだろう)
チキュはまだ顔を背けたまま、硬直して、ミチハの後姿を凝視している。
(こいつは、あの男を、どうするつもりなのだろう………)
家族のような存在を、突然に、無理矢理に、奪ってしまった男だ。
(………復讐ーーー)
黒い暗雲が、タツノの胸を占めた。
(…………危険だ。
決して、目を離さないようにしなければ)
あれ、誰? タツノ」
チキュが眉を顰めて訊ねてきた。
タツノはヴェールの奥から真っ直ぐにこちらに向けられた瞳を、じっと見つめる。
「中納言………ミチハだよ」
漆黒の双眸が、眦が切れてしまいそうなほどに見開かれた。
ぱっと機敏な動作で振り返り、大きく瞠目したまま、歩み去る男を目で追う。
「ーーーあれが、………ミチハ」
今にも消えてしまいそうなほどに小さく、掠れた声だった。
まだ幼さの残る頬が、ぴくりと痙攣したように見えた。
タツノの中に、不安の思いが拡がる。
(………こいつは、今、何を考えているのだろう)
チキュはまだ顔を背けたまま、硬直して、ミチハの後姿を凝視している。
(こいつは、あの男を、どうするつもりなのだろう………)
家族のような存在を、突然に、無理矢理に、奪ってしまった男だ。
(………復讐ーーー)
黒い暗雲が、タツノの胸を占めた。
(…………危険だ。
決して、目を離さないようにしなければ)



