天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

その声に気が付き、ミチハは視線を下に移した。




その目が、チキュの首飾りに留まる。





そして、視線をゆっくりと上げ、ヴェール越しに小さな顔を見つめた。





「まさか………」





男の不穏な視線を受けて、チキュはぴくりと肩を震わせた。





「なんだよ、あんた?」





「…………そなた。


『エーテル』か………?」





地から響くような声でそう訊かれたが、もちろんチキュには何のことか分からない。




一方タツノは、(やはり、気づかれたか)と思う。





これは予想外でも何でもなく、想定の範囲内だった。




一度は手に入れかけた『エーテル』の顔立ちや身体き、赤い首飾りのことなど、ミチハがあらゆる情報を手にしているのは当然だった。





だからこそ、ミチハが容易には手を出せないよう、チキュとの婚約を決めたのだ。





戸惑っているチキュの肩を、タツノはそっと抱き、ミチハを睨みつけた。






「中納言殿。


俺の大事な姫を、じろじろと見ないでくださいよ」





そのまま背後に隠すようにした。



ミチハの顔がみるみる険しくなる。





「…………そういうことか。


なるほど、考えたな。


………ふん、面白くもない」






吐き捨てるようにそう言うと、苛立たし気に顎鬚を弄りながら、ミチハは足音高く立ち去った。