*
「………おやおや」
二人が宴の会場に到着し、ソガノ家の席を探していると、すぐ後ろで、低い声が響き渡った。
タツノはゆっくりと振り向く。
「貴方は、ソガノ家の跡継ぎ、タツノ殿ではありませんか」
二人の背後に立っていたのは、顎鬚を長く伸ばした大男である。
「中納言殿………」
ミチハであった。
タツノは動揺を表情に出さないよう気を落ち着けながら応えた。
突然様子の変わったタツノに気づき、チキュは怪訝な顔をする。
長身の男が二人、チキュの顔の大分上の方で、なんだか宜しくない雰囲気で見つめ合っている。
居心地が悪くなり、チキュはそっとタツノの袖を引いた。
「………どうした? タツノ。
これ、誰?」



