天と地の叙事詩Ⅱ Epic of the Ether

「タツノ様。


一体、どなたが貴方様の寵姫に選ばれたのですか?」





一人の姫が勇気を出して訊ねた。



タツノは脂汗を流しながら、苦し紛れに逃げ道を作る。





「………ああ。


それは、この後の宴の席で披露するつもりだ」





姫君たちはきゃあきゃあとざわめき、「楽しみにしておりますわ!」などと口々にタツノに声をかけて去って行った。






それを見送りながらチキュは、タツノを見上げて言う。





「あんたも罪な男だなぁ!!


あんな綺麗な女の人たちを惑わせて!」





またもや屈託のない笑顔だ。



苦々しく複雑な表情を浮かべているタツノに気づくこともなく、さらににじり寄ってきて、囁く。





「………で、誰と結婚するんだ?


あの中の人? それとも他にいるわけ?」




「…………うん。誰だろうなぁ」




「ちぇっ! なんだよぉ、焦らすなよぉ。


オレとあんたの仲じゃないか!!」





ぐりぐりと肘で突ついてくるチキュに閉口しながら、タツノは宴の会場へとチキュを連れ立って行った。