タツノはチキュの目を覗き込みながら、さらに説明を続ける。






「ミチハは、かなりの野心家だ。


まぁ、うちの父もそうなんだが…。



俺の父のムラノは、伝統ある我らソガノ家が現在フジハ家に押されているのが、我慢ならないんだ。


今は参議に甘んじているが、いつか必ず目に物見せてやる、目指すは太政大臣だと毎日息巻いてるよ。



俺の官位も、今は蔵人の六位なんだけど、それもいつか必ず納言か、あわよくば大臣級に昇進させたいらしい。




………全く、親の勝手な高望みを押し付けられた俺も大変だよ。




話を戻すが、ミチハも、現在の中納言の地位なんかじゃ全く満足していない。



長年狙っていた大納言の座が、タカハの長男……つまりミチハの甥子であるコレハに奪われて、怒り心頭に発する、ってやつだな。


なんとか兄タカハの一門から権勢を奪い取ろうと、日々あらゆる画策をしているらしい。



確証はなかなか得られないが、フジハの前首長であるカネハのやり方を真似て、色んな所に布石を打っているというのが、専らの噂だよ」






聞き慣れない単語が羅列され、チキュは目を白黒させた。