「あっ、そういえば!!」




閑静な回廊の真ん中で、遠慮もなくチキュが大きな叫び声を上げた。





「さっきはあんたが抱きついてきたから聞きそびれちまったけど。


結局どうなんだ?


奴らはウタゲに来るのか?」





「抱きついてきたって、言葉が悪いなぁ。


抱きしめられたとかいう可愛い言い方ができないもんかねぇ、お前は」





タツノは嫌そうな顔で言った。




しかし、やはりある程度の情報は与えておいたほうがいいだろうと考えて、口を開く。





「お前を攫おうとしたのは、天貴人一の名門で、最高の権力を持つフジハ家という一族だ」




「フジハ?」




チキュが確認するように訊き返すので、タツノは軽く頷いてみせた。




「そう、フジハ家だ。


具体的には、そのフジハの首長である太政大臣タカハの弟、中納言のミチハが主導者だ」