ソガノの区域の端に来ると、タツノはもう一度チキュの纏ったヴェールを確かめた。




顔立ちがはっきりとは見えないように、ヴェールを掛け直す。





「………おいっ、タツノ!


これじゃ前が見えねぇよ!?」





「気にするな。


俺がエスコートしてやるらから、大丈夫だよ」





「えぇ? ほんとかよぉ」





ヴェールによって視界が遮られるのでチキュは不満そうだったが、これは父ムラノからの言いつけだった。





『エーテルの顔を見られてはならない』




その理由は、タツノにも教えてもらえなかった。




しかしどうやら、チキュの顔は、チキュの存在を知らしめることに繋がるらしい。





(………いつか、秘め事を暴いてやる)





タツノは暗い決意の炎を闇色の瞳に宿していた。