(…………そうか。


こいつは、まだ、知らないんだ。



そして、諦めてないんだ)






にこにこしているチキュを見つめ、タツノは思う。






(俺は、真実を知っている。



でも、…………言えない)






チキュをぬか喜びさせたくない。



だから、言えない。




それは本当だった。





ただ、それ以外にも、理由があるような気がする。





しかしタツノは、自分の胸の内を見つめることはやめた。






(…………真実を知ったら、こいつはどんな顔をするだろう。



俺は、それをーーー見たくない)







タツノは静かに佇んでいた。