敬子ちゃんが大きなため息を一つ吐いた。

「仕方ないなぁ~」

ついに観念したらしい。

「噂だし・・・。

劇団の評判にも関わるから・・・。

あんまり人には言わないで欲しいんだけど・・・」

「解ってるよ・・・」

僕は大げさにうなづいた。

敬子ちゃんは、ぐっと宙を睨(にら)み付けると、静かに語り始めた。

「そう、あれは・・・」

身を乗り出し、手を顔の前で組み、声を潜ませる。

話す気満々といった感じだ・・・。

「去年の春の発表会の時の事だったんだけど・・・」

敬子ちゃんの話は去年の春の発表会にまで遡って始まった。