ふっと、何かの気配を感じて、僕は後ろを振り返った。

何もいない。

気のせいか?

僕はじっと深い闇の奥の奥を凝視した。

やはり、何もいない。

大丈夫。

大丈夫だ。

何もいるはずがない・・・。

自分にそう言い聞かせ、気を落ち着かせると、僕は前に向き直った。

右手に階段の踊り場への入口が深い闇を湛えた大きな口をポッカリと開けている。

あの事件が起きたのは2階だ。

僕はその入口に向かって再び歩き始めた。