「昔、若い男が山の麓の家に引っ越して来ました。引っ越しをしたその夜、男が眠りにつこうとすると、庭の方から奇妙な声が聞こえて来ました。
『だれか…だれか…』と。」
無駄に上手い沖田の喋りに、
ヒィィ!と震え上がる三馬鹿←
斉藤は相変わらず涼しい顔←
土方はとてつもなくボーッとしている←
きっと、無心になって話をシャットアウトしようとしているんだろう。←
鬼副長のくせに←
きっと面倒な事になるので
笑いそうになるのを必死に堪えた←
今度はどんな妖怪なのか、
と推測しているうちに、
話はどんどん進んでいく。
「男は気になって庭に出てみたけれど、
そこには誰もいない。気のせいかと家に戻ろうとしたとき、庭の一角に大きな岩があるのが見えました。何故かぽうっとその岩だけ不気味に光っているので、男は怯えながらもその岩に近づいて行きました。すると、その岩の下から、青白い手が伸びてきたのです…。
そして、その岩の下から…」
三馬鹿は怖いのか、
ヒィィ!!とまた言いながら、
でも、真剣に話聞いている←
斉藤はやっぱり涼しい顔←
土方は顔を歪めている←
そして、あたしは、
そういえば、髪をちゃんと拭いていなかったなぁ…と思い、手拭いでワシャワシャと髪を拭き始めた。
「その岩の下から、『だれか…だれか…』と女の声が聞こえて…
…って、日向何してるの?」
ふと、沖田がこちらを向いたので、
「どうぞ続けて?」
とあたしは返した。
「日向…まさか…」
「どうぞ続けて?」
「話聞いてる?」
「どうぞ続けt…うわぁああ!!!」
沖田が髪を拭いていたあたしの手をガシッと掴んだ←
「な、何だよ。」
あたしが顔を引きつらせると、
沖田がニヤリと笑みを浮かべた←
「なーんで、耳を塞いでるのかなー?」
「…髪を拭いていただけデスケド何か? 」
あたしが顔を引きつらせると、
沖田はあたしの耳をビヨーンと引っ張りながら、
「日向の髪は此処にはえてるの??
明らかにここ押さえてたよね??
手ぬぐいの上から←」
不敵に微笑んだ←
「…き、気のせいじゃないっスか。」
ほら、髪をちゃんと拭こうと思ったら
耳の所も拭かなきゃでしょ??
と、苦笑いしながら実演してみるも、
「明らかに耳塞いでただろ。
総司と話が噛み合って無かったし?
俺にあんだけ言っといて、テメェが怪談怖いんじゃねぇかよ。」
土方がドス黒い笑みを浮かべた←
何、ボーッとしてたくせに、
そういうところだけは見てんだチクショー!!!

