「…そんなに匂うのかよ。」
土方ははぁ…と溜息をつき、
布団から出て立ち上がり、
襖の外を確認した。
「…匂うよ。町の方から。」
もちろん、塀があるから、
屯所の外は見えるはずがない。
しかも、
空はまだ明るくなりはじめたばかりで、
周りは静まり返っていて、
騒ぎが聞こえるような感じでもない。
けれど、確かに匂う。うん。
あたしが、
じーっと空を見つめていると、
「!…お、戻ってきた。」
ある気配を感じた。
「何がだよ。」
怪訝そうに眉を寄せる土方に、
あたしも同じように眉を寄せた。
「…朝から見たくない奴だよ←」
そうやって、
土方の部屋の天井を見上げると、
「仕事帰りの一言がそれって、
結構キツイで日向(笑)←」
黒い忍装束を着た山崎が
天井裏から降りてきた。
普段ならメッタメタにしてやりたい所だが、
「…!」
あたしは山崎から微かに香る匂いに顔をしかめた。
「副長、報告や。
長州の奴ら今「大量の武器を持ち運んでいる。…だろ?」
あたしは山崎の言葉を遮った。
「?何や日向知っとんかいな。」
目を丸くする山崎に、
すべてが結びついた。
山崎が纏わせていた匂いとは、
あたしが嗅いだ火薬の匂いそのものだ。
「…じゃあ、日向が言ってた火薬の匂いっつーのは…」
土方も気づいたのか、
真剣な表情になった。
「…長州が武器を持って動き出したんや。何かやらかすかもしれへん。
今、島田が見張っとる。」
はよ、止めなあかんで、
そう山崎が言ったその時、
ドーーーンッ!!!!!
「「「!!??」」」
静かな京の町に、
大きな大砲の音が響き渡った。
「…チッ、遅かったか!!」
土方が顔を歪めた。
「もたもたしてるからこうなるんだよ、バーカ。」
あたしは縁側から庭へ飛び降り、
塀の前まで走っていき、
タンッ
と、地面を蹴って塀の上に登った。
「わー、身軽やなぁ…」
と、山崎が羨ましそうに言ってるのは
無視無視←
大きな音ではあったけど、
距離は結構遠かったから…
と、あたしは目を凝らして
京の町を見渡した。
すると、向こうの方に
煙が上がっている場所が見えた。
その場所は…
「…!?
土方!!御所の方だぞ!!??」
「何だと!!??」
天皇が住んでいる、
京都御所だった。

