翌朝、チェルミはディルバに招待状のことを尋ねてみようとしたら、ディルバは学校を休んでいた。


「あれ・・・?」


家にもいないし、学校には体調が悪くて休んでいることになっている。

お婆ちゃんもディルバが慌ててテレポートして言ったこと以外何も知らなかったから心配になった。



そして午後になってチェルミはランダルから驚きの情報を得ることになってしまう。


「えっ?ディルバが結婚する・・・って?」


「妖精統括部という部署からミロア宛てに招待状がきて、招待状には妖精王ディルバと妖精王妃ヒラル・レブ・コアンナ(22才)が結婚することになったと書かれていたんだ。

たぶん、君はあのマウレスって伯母さんに騙されてしまったんだ。」


「そんな・・・。それで・・・ディルバは。」


「ディルバ次第だろうけど、招待状の出し方によっては覆らないかもしれないと、ミロアが心配している。」


「そう・・・。」



チェルミは目の前が真っ暗になってしまった。

楽しく卒業して・・・としか考えてこなかっただけに、呆然とするしかない状況だった。


家にもどってもナタリアと落ち込むしかなかった。

ナタリアに言わせると、他に嫁をもらってもどってきたら家からは出ていってもらうとはっきり言っていた。



チェルミは気をまぎらわせるために外へ出かけてみた。

喫茶店で久しぶりにコーヒーを飲んでいると、隣から声がして、そちらをみるとジェミオがスーツをきて立っていた。


「お仕事?」


「まあね。これでも科学者の端くれなんでね。
なんか、暗いイメージで見たことのある女の子がいるなぁって思ったら・・・。
どうしたの?」


チェルミはディルバがいなくなったことと招待状のことをジェミオに話したのだった。


「へぇ。けっこうややこしいことになってたんだね。
じゃあ、僕が抜け駆けしちゃおうかな。なんて。

チェルミ、もし・・・ディルバが結婚していなくなってしまったら、僕のお嫁さんになってくれないかな?」


「え・・・。ええっ!!?」


「やっぱ、ダメかな。僕は科学の能力しかほこれない人間だしねぇ。
だけど、相手がどういう種族でもいいんだとしたら、人間の僕でもいいってことになったんでしょ。

そりゃ、子どもが魔法使えるか?ってところはクエスチョンだけど、そこがあきらめがつくなら僕の嫁さんになってくれないかと。

まぁ、君とディルバの気持ちは知ってるから、僕の出る幕なんてないだろうけどね。ははは」



「ごめんなさい・・・それからありがとう。
ジェミオにもいっぱいお世話になったのに。」



すると緊急連絡がチェルミの携帯に入ってきた。


「はい。・・・あっ、カリフ・・・久しぶり。」


「ミロア様は今忙しいから俺がかわりに連絡してる。
大変だ。ディルバとマウレスが人質にとられてしまった。

どうやら妖精王との婚礼のことは妖精統括部を仕切っているコアンナ家が仕組んだことだったみたいなんだ。」


「えっ?ディルバとマウレスが人質ってどうすればいいの?」


「2人はテレポートできないように手枷足枷されているらしい。
マウレスが捕まっていて、ディルバは攻撃も何もできなかったみたいなんだ。
せめて2人が居る場所が特定できれば魔法で助けることもできるんだがな・・・。」


するとジェミオがにっこりと笑って電話をかわってくれと合図をしたのでチェルミはカリフからの電話をジェミオに渡した。


「お久しぶりです。ジェミオです。
ディルバの居場所がわかればいいんですよね。
彼にはこの前にこっそり足の小指の裏に発信器を埋め込みましたからわかりますよ。
発信器からのデータをそっちに転送しますよ。」


「おお、さすがジェミオだ。」


ジェミオはすぐに自宅へともどり、チェルミもついて行ってデータをもらいうけ、ジェミオはひと揃えの道具などを抱えてカリフのいる魔法の国へととんだ。


「なんか・・・僕までおじゃましてしまっていいのかなぁ?」


「ジェミオは特別よ。すごい能力者だもの。」


「あはは、うれしいというべきなんだろうね。
それにこの魔法の国ってところも初めて観光する人間は僕が初めてみたいだし。
あははは。

よし、場所は特定できたけど・・・カリフや君のお兄さんは入れないみたいだね。
かなり部屋にぬけるところが小さいようだ。」


「じゃあ、私ならいける?」


「うん。動物になってなら誰でもいけると思うけどね。」


「ほんとにジェミオって魔法を使えないのにいろいろ考えつくのね。」


「いや、小さくなれればなんでもいいだけだと思うよ。
君たちのように魔法を使える人たちの方がすごいに決まってるじゃないか。

しかし・・・2人を保護してテレポートすることは可能なのかな?」


「ダメなら小さなものにでもなってもらうわ。」