ディルバは自室へ戻る前にチラッとチェルミの部屋をのぞいてみた。

いつもは部屋をのぞき見るようなことはしないが、今夜は見なければいけないような気がして立ち寄ってしまった。

ベッドで寝息が聞こえたので、部屋にもどろうとすると、チェルミが寝返りをうったのでディルバは少しチェルミの顔を見ることができた。


「はっ・・・」


顔いっぱいに広がった涙の痕、そして瞼も腫れている。

ディルバはあわてて部屋を出るとふっと笑顔になってしまう。


「かわいそうなことをしたな。
けど、俺は今すごくうれしいと思ってる。

チェルミが俺と離れてしまうことをあんなに悲しんでくれたかと思うと・・・。
俺は先生は失格だよな。
教え子にこんな感情を持ってしまって。」


ディルバは意を決したように自室へもどっていった。




翌朝ディルバはチェルミを誘拐するように起きてすぐテレポートをした。


「先生?・・・どこへいくの。」


「ここは学校じゃないだろ。」


「ここって・・・妖精の森みたいだけど・・・。
どういうこと?」


「いいから黙ってみておけって。」


到着したところはマウレスの住まいの中だった。
そして、マウレスが居間へとやってくる。


「えっ??私、ここに居ちゃいけないんじゃないの?」


「いいから。黙ってみてろって。」



「返事を持ってきたの?」


「ええ。僕の思いのすべてを伝えるために・・・。
僕の要求は、生活は人間界の自宅中心でテレポートで行なうことと、将来の伴侶は魔女のチェルミであること。
それをのんでくれるなら、妖精王の話はお受けします。
それ以外を要求するなら妖精王はお受けできません。
べつの方をお願いして、今まで通り僕は人間界で暮らします。」



「そうですか・・・。
伴侶を妖精族でという要求は望んでも無理なようですね。
でも、妖精の森は強い代表を必要としています。

あなたの存在は絶対であり、今回のウィルス騒ぎでもあなたとそのお嬢さんの活躍あればこそ・・・なのも事実です。
あなたが妖精王ならば、制度を変えればいいだけのこと。
実際かなりもう、制度は変わってしまっていますし、地域を守るということから考えれば妖精でも魔女でもかまわないのですが・・・そちらのお嬢さんはどうでしょうかね?」


「あの・・・伴侶って・・・奥さんのことだよね。
それって、それって・・・ディルバの奥さんのことだよね。」



「もちろん、正式には学校を卒業してからだけどな。
もう少しだし、いいかな?なんて。」



「あの・・・私・・・。
そんないきなり、そんなの。

昨日は別だって・・・私は帰るものだと思ってたし・・・」



「いきなりでごめんな。
でも、マウレスの前でこうやっていう方が真実味があるかなっと思ったものでな。
俺の真剣な答えをきいてほしいから・・・。」



「私・・・私の一存では決められないです。
うれしいけど、まだ決められなくて。
これから魔法の国に行ってきます。
答えはそれからでもいいですか?」


「ああ。じゃ、30分後に迎えに行くからここへ連絡してくれ。
迎えに行くから。
じゃないと学校に遅れるしな。」


「はい。」



チェルミは胸を押さえながらミロアのところへと出向いた。


ミロアは予感していたかのように、呆れた顔をしていた。


「早く用件を言え。」


「お兄さま、何?そのめんどくさそうな言い方?」


「こっちは今すごく忙しいんだ。
おまえのどうでもいい用事なんて、きいて一言返事すれば済むんだろ。」


「えっ?どうでもいいって・・・。」


「早くしろ。ミレイの結婚式の予定もあるからそのあとになるけどな。」


「えっ・・・ミレイお姉さまが誰と?
もしかして・・・カリフとなの?」



「ああ、カリフととても相性がいいのでな。
それで・・・おまえの方はどうなんだ?」



「だから、私も・・・先生と。
あっ、ディルバがさっき妖精王になる条件を伯母様につげていたの。
その中に、私を妻にしたいって・・・。」


「すると、おまえは妖精王の妻になるんだな。」


「そういうことになっちゃうけど・・・妖精族になっちゃダメ?」


「ぷっ!あっちもいろいろと制度を変更せねばならなかったんだな。
いいだろう。
おまえたちのおかげで、2つの世界が平和になったのも確かなのだからな。

ディルバが妖精王になるのなら、治安はおまえたちだけでもよくなると予想がつく。
しっかりがんばれよ。」


「じゃあ、お兄さま・・・。私・・・妖精王の奥さんになってもいいのね。」


「ダメっていってもおまえは行ってしまうつもりだったろう?」


「えへへ。うん。
よぉーーし、あと少し、学校へいってきまぁ~す。」

チェルミはそういって、ディルバをすぐに呼んで登校した。