カリフは涙を浮かべながらチェルミを抱き上げ、そのカリフごとディルバは家へと送った。


「はぁはぁはぁ・・・さすがに2人はきつかったみたいだ。」


「すまない、ディルバ。でも、おかげでチェルミを早く寝室で眠らせてあげられたよ。」


「ああ、わかってる。
チェルミは半信半疑なんだよね。

お父さんは元気だと信じていながら、地元が心配で仕方がないんだなって思うよ。
あれ?あいつは・・・?ランダル。」


「ああ、ランダルは先に魔法の国の様子を見に行ったよ。
彼は純粋種だから、動きやすいし、止めなきゃいけない相手を確認しにいってる。」



「ウィルスで狂ってしまっている彼がひとりなのかどうか・・・?かな。」


「ああ、それがまず重要だ。一番困っているのはそいつだから。
あとの妖精族が暴れてるのがいても、力で何とかなる相手なら問題ない。」



「そいつそんなにすごいのかい?」


「ああ、残念なことだが、王様でも対処できなかったらしい。
呪文が言い終わらないうちにみんな殺されてしまう。
魔法使いは大きな魔法を使おうとすれば、呪文を省略するわけにはいかないから。」


「確かに・・・。
それで、妖精王っていうのはテレポートを主体に使ってくるのか?」


「ああ、呪文をつぶやく魔法使い目がけて突っ込んでくるらしい。」


「そうか。俺のテレポートでチェルミの役にたつんだろうか・・・。」


「役にたつね。
ランダルの調べによると、テレポートの発動や到達の様子をきくと、君の方が速いくらいだ。
問題は、チェルミを連れて動くのにどのくらいの速さが必要なのかってね・・・。

でも、何とか君たちが妖精王を引き付けてくれることに成功すれば、他のメンバーで対処もできる。
だから、目の前で捕まらなければなんとかなる。」



「そうか。じゃあ、妖精王でも倒せるかな。
でも、妖精王を倒して妖精界はやっていける?」


「もちろん。いや、正直いって妖精側も困っているらしいんだ。
ウィルスで狂っているし、味方だって避けるのがいっぱいで無事とはいえていない。
すでに被害もけっこう出てるらしいし、あちらでも止められずに困っているってことなんだ。」


「困ったやつだな。・・・うーん・・・。」



そのとき、ジェミオから連絡の電話がかかってきた。


「そ、そうか。それで・・・ええっ、それじゃそいつは・・・わかった。
明日、チェルミとディルバといっしょに本国へ行ってみようと思っていたところなんだ。
それで除去剤をいくつかもらおうと思ってたんだ。

うん、そうするよ。じゃ、よろしく頼むよ。」



カリフがジェミオと電話をしてディルバに説明するには、ジェミオが心当たりがあるといっていたウィルスをまいている人物が妖精王にウィルスを飲ませたという。
そいつはゲルア・バールという妖精族の子孫らしい。

しかし、ゲルアは魔力めいたものがぜんぜんなく、見た目は人間なので、実力を見せつける意味も含めてウィルスを使ったらしく、すでにもう妖精族の警備隊に捕まったらしい。


「しかし、まだ妖精族の幾人かが感染しているらしいから、安心はできないそうだ。
混血種向けの除去剤と最近テスト前だけどできあがってる妖精族用の除去剤をジェミオが用意したって。」


「それを分けて持った方がいいね。
混血種と妖精族用か・・・魔法使いに感染者が出ていなければいいんだが。」


「そうだね、でも、魔法使いなら、魔法で対抗できるから大丈夫さ、殺してしまえばいいんだ。」


「そうか・・・。まぁ、こればっかりはジェミオしか用意できないしな。」