それから1週間後、カリフのところに魔法の国から使者が現れた。

一見気難しい感じのする青年といったところか。

実年齢はカリフ同様わかりにくいが、チェルミからみれば彼は25才くらいと見た目そのままだという。

しかし、なぜ本国からとばされたお姫様に貴重な護衛をひとり送り込んできたのか、このときは誰も気がつかなかった。


「私が昼間の警護を受け持ちますので、姫様にはどうかご安心のほどを・・・」


「あのねぇ、ランダル・・・どうしてあなたが私の同級生になりうるわけ?」


「それはもちろん、警護のためです。」


「あのね、警護だったらディルバもカリフもいるから、ぜんぜん大丈夫ですって。」


「大丈夫なんていうことはありません!
それもたったの3人で魔法も何も使えない姫様を守るなんてことは、危険すぎます。」


「はぁ?もう・・・ここは国の式典をする場所じゃないしぃ・・・。
夜だけでも魔法を使わなきゃってことはめったにないわよ。
こっちはいたって平和です。」


「いや、こっちはまだ・・・と言った方が。
とにかく、護衛に来たのですから、本部の命令は絶対きいていただかないと。」



「まぁ、何かと人手は便利なんだから、気にせずおいてやれって。」


「カリフまでそういうのなら、仕方ないわね。
私の生活を脅かさないでね。いい?」


「脅かすことが何かあるんですか?」


「ないわよ。」


「もう、よさないか。とにかく、明日からはクラスメイトなんだからな。
仲良くしてくれないと・・・。なっ」


「ではもうすぐ夜ですから、魔法のお相手をいたしましょう。」


「ええっ!!!あ、あんたが?」


「嫌、魔力補給までは担当が決まってるんだから。」


「え・・・それはカリフ様が・・・?」


「まぁ、ランダルこっちにもいろいろわけがあってな。
補給までちょっと待ってくれ。」



しばらくしてディルバが現れて、カリフから魔力を受け取ってチェルミに与えようとしたとき、ランダルは声をあげた。


「どうして、妖精族がお嬢様・・・いえ、チェルミに魔力を供給するなど!!してるんです。」



「いや、だからいろいろとこっちにも事情があるって言っただろ。」


「我々は、妖精族からどういう仕打ちをされているかわかっててさせているのですか?
もうすぐ壊滅の危機だというのに、お嬢様は・・・もう!」


「ねぇ・・・今、もうすぐ壊滅ってどういうこと?」


「あ、いや、その・・・じつは・・・王様が必死に皆を支えて戦っておられますが、お年のこともあっていよいよやばいのでは・・・と下々では言われているんです。」



「だって、兄様がまだ2人もいるし、姉様だって2人いるのに。
いったい、どうしたの?」



「それが・・・じつは・・・次男のフィローニ様が先日、妖精族のフラビスに倒されてしまいました。
おそらく、長兄のミロア様も、もう・・・。」



「なっ・・・なんですって。フィローニ兄様が倒された・・・。
そんな・・・他の兄弟たちも・・・そんな・・・。そんなことになったらお父様が。」



「ランダル、君はどうしてここにやってきたんだ?
何か重い任務を得てきたということだよな。」



それまで黙っていたディルバが口を開いた。


「ああ、俺はフィローニ様に仕えていた戦士のひとり。
しかし、主をお守りすることはかなわず、王様から命令を受けた。

チェルミ様を守るようにと。
そして、チェルミ様と添い遂げ子を生すようにと・・・。」


「そうか・・・。わかった。」


「貴様、わかったといいながら魔力補給をなぜ?」


「俺はチェルミが好きだからだ。
だからといって、俺はまだチェルミを自分の好きにはできない。」


「どういうことだ?」


「彼が私の先生だからよ。
あと約1年ちょっとあるわ。」


「へぇ、そういうめんどくさいことがこっちにもあるんだな。
じゃ、決めた。
僕は生徒として入学するのはやめるよ。
先生として君の担任になる。

そうしたら、彼は僕のライバルとして対等の身分だろ。」


「ほぉ・・・。
どうやって学校にもぐりこむのかと思いきや、そういうことか。
俺はどっちでもかまわない。
ただな、学校で先生は生徒に手を出すわけにはいかない。
それだけは心に刻んでおけよ。」


「おまえなどにはいわれたくもないな。
それと魔力補給は・・・。」


「ディルバ先生がいいの。
もう誰にも代わってほしくないの。」


「しょうがない。君がそういうなら・・・。
カリフも困ったもんだな。
カリフ、カリフ・・・どうした?」