チェルミは刃物男の事件後から、再びディルバと夜デートを重ねるようになった。
夕方、ジェミオが訪ねてきたことを説明すると、ディルバはチェルミを連れてジェミオの住まいへとテレポートした。
「彼がジェミオだね。」
「ええ、引っ越しの支度してるみたいね。」
ディルバは意識を集中させると、ジェミオの書いていた論文を透視してざっとななめ読みした。
「人類学はもちろん、人類ではないものにもかなりの知識があるようだな。」
「人間なのにすごい先生なのね。」
ディルバとチェルミは声を出さずに意思だけで会話していたはずだったが、しばらくして部屋の中からジェミオの声がした。
「あのぉ・・・僕の正規に書いた文書類にはちょっとした魔除けがしてありましてね。
気配で訪問がわかるようになっているんです。
盗み読みしなくても、お茶でもいれますんで、入口から入ってきてください。
チェルミさんと・・・彼氏のエスパーさん。」
「うわっ、びっくりだな。俺が透視していたのが見破られてしまうとは・・・ね。」
「ふう・・・ん。人ならざる者の学校の先生か・・・。」
「おい、俺は超能力はあるけど、れっきとした人間だぞ。
父親は俺を勘当してるけど、世間に名の売れた実業家だし、母だって人間だ。」
「違いますね。あなたは人間とおそらく・・・妖精族とのハーフまたはクォーターといったところだな。」
「妖精族だって!!?俺はそんなこと家族からきいたことはない。」
「でしょうね。ここで生きていくのに特殊能力をひけらかせなければ、人として何ら問題なく毎日を過ごしていけるんですからね。
ただ・・・先日の刃物男からウィルスを感染させられていたら・・・あなたは彼女を守るどころか彼女を殺していたかもしれません。」
「なっ・・・なんだって。そんな・・・」
「空気感染や接触感染じゃなくてよかったです。ほんとに・・・」
「っ・・・うう。」
「いけない!チェルミさん、僕の後ろへなるべく遠くに下がっていてください。
彼は感染していたんです。たぶん、斬りつけられた傷から入っていたんだ!さがって!」
「そんな・・・ディルバ先生、先生が苦しんでるのに・・・逃げるなんてできません!」
「だめだ!君が感染したら、この世界が吹っ飛ぶほどやばい。
彼なら、僕が鎮めます! この前の試薬がここにありますから、もしあなたに特殊能力があるのでしたら、彼の動きを止めていただけませんか?
注射をうちたいんです。そうすれば落ち着く。」
「わかりました、魔法で止めますからその間に、先生をもとにもどしてください!
チェル、チェル、リリム、ラ・・・ムート!」
ジェミオはディルバが動けなくなっている間に、足首の青くなっている部分に注射をした。
「足を怪我していたんですね。おそらく彼ならよく効いてくれるはずです。」
ジェミオの言葉どおり、ディルバは魔法の効果がなくても、しばらく目を閉じたまま、スースーと寝息をたてていた。
「すごい薬ですね。これがあれば、私の故郷が救われます。」
「だめです・・・残念ですが、まだ・・・改良しなきゃ。」
「どうしてですか?先生にはこんなに効いてるのに?」
「彼は人間がベースだからです。ハーフとか人でない存在の細胞が人間の細胞とまじっている人にはよく効く薬。いや、抗体なんです。
これは僕の体内で作った抗体を製剤にしたものです。
僕は、純粋種の人間。つまり、先祖代々、人の子です。
このウィルスは人には大したことのない存在。
だから、抗体を僕の体で作って、僕の人間部分の力で、彼の人間の細胞を強化してウィルスを握りつぶしたと思ってください。
しかし、感染したのがあなただったら・・・僕の抗体では・・・無理なんです。
あなたの中に人間の細胞がないからね。
鎮めようがないんですよ・・・そういう相手は。
だから、これから早急に研究して、あなたやあなたと同じような、人間と混じり気がない別種族の純粋種であっても救いたいんです。」
「そうだったんですか・・・。」
「なんか、短時間なのにあなたは僕を信用してくれたみたいですね。」
「そりゃ、こんなふうに私の大切な人を助けてくださったんですもの。
それだけで、感謝します。」
「まいったなぁ・・・それじゃデートしながら信頼してもらう予定がなくなってしまうじゃないか。」
「もう、ジェミオ先生ったら。
あの・・・お礼に、今、引っ越しを終わらせるお手伝いをいたしますわ。」
「えっ!?も、もしかして・・・魔法でちょいちょいっと・・・なんていうんじゃ?」
「そうですよ。私、夜だけ魔女なんです。
じゃ、チェル、チェル、ルルル・・・引っ越し引っ越し・・・♪」
「うわっ!!!書類がみんな空を飛んでる!すげーーー!」
「ジェミオ先生、他に必要なものを口に出して叫ぶか、ペンでチェックの印を箱や袋につけていってください。どんどん飛んでいってもらいますから。」
「了解!すごいなあ。引っ越し屋が商売あがったりだね。このやり方されたら。あはははは。」
夕方、ジェミオが訪ねてきたことを説明すると、ディルバはチェルミを連れてジェミオの住まいへとテレポートした。
「彼がジェミオだね。」
「ええ、引っ越しの支度してるみたいね。」
ディルバは意識を集中させると、ジェミオの書いていた論文を透視してざっとななめ読みした。
「人類学はもちろん、人類ではないものにもかなりの知識があるようだな。」
「人間なのにすごい先生なのね。」
ディルバとチェルミは声を出さずに意思だけで会話していたはずだったが、しばらくして部屋の中からジェミオの声がした。
「あのぉ・・・僕の正規に書いた文書類にはちょっとした魔除けがしてありましてね。
気配で訪問がわかるようになっているんです。
盗み読みしなくても、お茶でもいれますんで、入口から入ってきてください。
チェルミさんと・・・彼氏のエスパーさん。」
「うわっ、びっくりだな。俺が透視していたのが見破られてしまうとは・・・ね。」
「ふう・・・ん。人ならざる者の学校の先生か・・・。」
「おい、俺は超能力はあるけど、れっきとした人間だぞ。
父親は俺を勘当してるけど、世間に名の売れた実業家だし、母だって人間だ。」
「違いますね。あなたは人間とおそらく・・・妖精族とのハーフまたはクォーターといったところだな。」
「妖精族だって!!?俺はそんなこと家族からきいたことはない。」
「でしょうね。ここで生きていくのに特殊能力をひけらかせなければ、人として何ら問題なく毎日を過ごしていけるんですからね。
ただ・・・先日の刃物男からウィルスを感染させられていたら・・・あなたは彼女を守るどころか彼女を殺していたかもしれません。」
「なっ・・・なんだって。そんな・・・」
「空気感染や接触感染じゃなくてよかったです。ほんとに・・・」
「っ・・・うう。」
「いけない!チェルミさん、僕の後ろへなるべく遠くに下がっていてください。
彼は感染していたんです。たぶん、斬りつけられた傷から入っていたんだ!さがって!」
「そんな・・・ディルバ先生、先生が苦しんでるのに・・・逃げるなんてできません!」
「だめだ!君が感染したら、この世界が吹っ飛ぶほどやばい。
彼なら、僕が鎮めます! この前の試薬がここにありますから、もしあなたに特殊能力があるのでしたら、彼の動きを止めていただけませんか?
注射をうちたいんです。そうすれば落ち着く。」
「わかりました、魔法で止めますからその間に、先生をもとにもどしてください!
チェル、チェル、リリム、ラ・・・ムート!」
ジェミオはディルバが動けなくなっている間に、足首の青くなっている部分に注射をした。
「足を怪我していたんですね。おそらく彼ならよく効いてくれるはずです。」
ジェミオの言葉どおり、ディルバは魔法の効果がなくても、しばらく目を閉じたまま、スースーと寝息をたてていた。
「すごい薬ですね。これがあれば、私の故郷が救われます。」
「だめです・・・残念ですが、まだ・・・改良しなきゃ。」
「どうしてですか?先生にはこんなに効いてるのに?」
「彼は人間がベースだからです。ハーフとか人でない存在の細胞が人間の細胞とまじっている人にはよく効く薬。いや、抗体なんです。
これは僕の体内で作った抗体を製剤にしたものです。
僕は、純粋種の人間。つまり、先祖代々、人の子です。
このウィルスは人には大したことのない存在。
だから、抗体を僕の体で作って、僕の人間部分の力で、彼の人間の細胞を強化してウィルスを握りつぶしたと思ってください。
しかし、感染したのがあなただったら・・・僕の抗体では・・・無理なんです。
あなたの中に人間の細胞がないからね。
鎮めようがないんですよ・・・そういう相手は。
だから、これから早急に研究して、あなたやあなたと同じような、人間と混じり気がない別種族の純粋種であっても救いたいんです。」
「そうだったんですか・・・。」
「なんか、短時間なのにあなたは僕を信用してくれたみたいですね。」
「そりゃ、こんなふうに私の大切な人を助けてくださったんですもの。
それだけで、感謝します。」
「まいったなぁ・・・それじゃデートしながら信頼してもらう予定がなくなってしまうじゃないか。」
「もう、ジェミオ先生ったら。
あの・・・お礼に、今、引っ越しを終わらせるお手伝いをいたしますわ。」
「えっ!?も、もしかして・・・魔法でちょいちょいっと・・・なんていうんじゃ?」
「そうですよ。私、夜だけ魔女なんです。
じゃ、チェル、チェル、ルルル・・・引っ越し引っ越し・・・♪」
「うわっ!!!書類がみんな空を飛んでる!すげーーー!」
「ジェミオ先生、他に必要なものを口に出して叫ぶか、ペンでチェックの印を箱や袋につけていってください。どんどん飛んでいってもらいますから。」
「了解!すごいなあ。引っ越し屋が商売あがったりだね。このやり方されたら。あはははは。」

