二人の若いカップルが
屋敷の中に入っていった。


『怖いよぉお。』
と彼女が彼氏の腕を掴みながら

先へと行くのを
黒猫はモニター越しに見ていた。



黒猫は他の動物より
人間らしい。


黒猫はフッと鼻息を出すと
モニターの近くに置いてある
20個並べられたボタンのうちの

一つを肉球で押した。




この黒猫屋敷は
飼い主のツグミが生きていた頃

あまりにも年をとらない
黒猫のために

作った建物だった。


ツグミはもしかしたら
自分が死んでもなお生きているかも
しれない黒猫を思い


退屈しないようにと
作ったのだ。



だが黒猫自身にも
わからない事があるのだ。



それはこの20個のボタンだ。