黒猫の過去を知るものは
誰もいない。


ただ知っているのは黒猫と
亡くなったツグミという飼い主だけ。



黒猫の噂は半分が本当だ。

何故か黒猫は飼い主であった
ツグミという女性が老いてもなお
毛並みも体も衰えていないのだ。

そして黒猫は
飼い主とさまざまな体験をしたのを
時折長い客の列を見ながら
思い出していた。


黒猫は体は衰えていなくても
精神は老いているのだ。


体は若くても
黒猫にとって100年近く
生きていたら
嫌でも知能がつくのだと
黒猫は思っていた。


それ故
黒猫は若い風貌なりに
たたずまいは人間の老人そのものだ。



今日も黒猫屋敷は
賑わっている。