・・・・・・幻聴・・・?

首をかしげながらも顔を上げて、私は思わずぽかりと口を開けてしまった。


「く、りゅう、くん・・・・・・」


だって・・・目の前に、息を荒げた久流君がいたんだもん・・・。


「な、なんでっ・・・“本当の裏庭”に、いたんじゃ・・・
ここ・・・女子トイレだしっ・・・・・・きゃっ」

かすれた声でおどおどと言い始めると、何も言わずに久流君が私を抱きしめた。

心臓が、バクバクする。
体全体が熱くなる。


「・・・・・・くりゅうくん・・・?」

呟けば、回された腕の力が強くなる。


「なんで、泣いてんだよ・・・。何か、あったのか?」


耳に響く、久流君の心配そうな声に、きゅぅっと胸が締め付けられる。

涙が溢れて、ぼろぼろとこぼれだす。

久流君の制服が濡れちゃうって、思うのに、涙は止まってはくれなくて・・・。


「ごめんなさいっ・・・制服、濡らしちゃって・・・ごめんなさいっ・・・」

「いいんだよ、別に。そんなこと、気にすんな。謝るな。」


震えた声で謝る私に、怒ったように答える久流君。
でも、怒ってるようなのに、その声は温かくて・・・


「・・・・・・久流君っ・・・」

「ん?」

「私に構ったのは、気まぐれですか?」

思わず、ずっと心にこびりついていた不安が、口をついて出た。


「私のこと、本当はうざいと思ってますか?
本当は・・・もう、関わりあいたくないって、思ってますか?」

久流君、私は今、あなたの背中に手を回してもいいんですか?


「私・・・・・・これからも、久流君の傍にいてもいいですか?」

かすれて、震えた情けない声。
でも、言葉は、まるで流れる川のように、口から流れ出た。