変わり者同盟

「あのさ、それはあんたの祖父ちゃんがよぉーく知ってるから、あんたの祖父ちゃんに聞きなさい。」


面倒くさそうに、実にげんなりと大河内さんは言う。

久流君は、微笑んだまま首を振る。


「ある生徒から『大切な場所だから、荒らさないでほしい。』と頼まれた、としか聞いてないんですよ。

プライバシーの侵害になるとかで。」

「じゃ、それで我慢しときな。それだけ知れれば、充分さ。
あたしだって、プライバシーは守んなきゃならないからね。」


・・・・・・・確かに、むやみやたらと口外しちゃ駄目だよね。
2人とも、学校関係者なワケだし。


けれど久流君は、そんなの関係ないというように微笑んだまま続ける。

「教えて頂きたいのです。お願いします。」

「人の話を聞いてたのかい?プライバシーは守んなきゃならないんだよ!」


イライラと言う大河内さんを見て、久流君はするりと笑みを消した。

孤高の一匹狼。
私がそうイメージした、教室での久流君のポーカーフェイスが現れた。


「・・・・・・ですが、“知る権利”が、あるんじゃないですか?」

ピタリ。
大河内さんの全ての動きが止まる。


「俺には“知る権利”が、あるんでしょう?」

確信的に話す久流君に向けて、大河内さんが視線を鋭くした。


「久流和真。あんた、知ってるんじゃないかい?」

「いえ、知りませんよ。知らないから、来たんじゃないですか。」

久流君を睨む大河内さんと、ポーカーフェイスの久流君。


かなり異様な空気の中、私は息を潜めて事の成り行きを見守った。

何も知らないし、分からない私ができるのはそれぐらいだから。


「知らない?じゃあ、なんで“知る権利”があるなんてほざくんだ。」

吐き捨てるように言った大河内さんに、久流君が平坦な声で答える。

「直感、です。」


大河内さんがため息をついた。