うぅ・・・なんか、好きだって気付いたら更に敬語になっちゃう・・・。

反省しつつ、昇降口で内履きに履き変える。


事務室は、職員玄関のすぐ傍にある。職員室、校長室とも近い距離。

けれど、久流君はクロを腕に乗せたまま、平然と職員室の前を歩く。


幸運なことに、近くには誰もいなかったのだけど、私はすごくひやひやした。

・・・久流君って、なんで、そんなに堂々とできるんだろう・・・。


本気で不思議に思ったところで、久流君の足が止まった。

目の前には“事務室”のドア。


久流君はコンコンと軽くノックをし、返事を待たずにガチャッとドアを開けた。

そして、遠慮なくずんずんと奥へと進んでいってしまった。


さすがに私は気後れがして、久流君が開けたままにしているドアの前で、右往左往する。

ちらちちらと、奥の方を覗くも、久流君のようにずんずん進む勇気が出ない。


・・・意気地なし。

自分を叱るも、やっぱり根性の無い私は、ここで足踏みすることしかできない。


どうしよ・・・・・・



「何勝手に入ってきてんだい!!!!!!」

突然の怒声に、うろうろしていた私はビクッと反応し、ピタリと動きを止めた。


・・・大河内さん、だ。

怒られてるのって、まさか・・・まさか・・・


「すみません。でも、俺、急いでたので。」

「なーにが急いでた、だっ!!!フンッ!校長の孫だからっていい気になるんじゃないよ、久流和真!!!!!!」


や、やっぱり、怒られてるのって久流君だ!

うわああ、どうしよう!


ここは久流君の援護に出て行くべき?いや、でも、私、援護なんてできないし・・・。