「かぁ」


カラス特有の、甲高いようなしわがれた声を放ち、カラスは久流君の腕へと飛び移った。

久流君は、腕を曲げていて、飛び移ったカラスの後頭部を優しく撫でている。


え、ええええええええ・・・。

カラスを腕に乗せている人、初めて見たっ・・・


唖然としていると、久流君がくるりとこっちに向き直り、にこりともせずに言った。


「コイツ、俺の親友でクロって名前。
・・・仲良くしてくれるか?」

言い終わった後、心配そうに久流君が上目遣いをした。


うっ・・・
その端整な顔で上目づかいはやめてほしい。

好きな人にそんな顔されて、断れる人なんていないよ・・・。


私は、コクリと静かに頷いた。

すると久流君は、ほっと胸を撫で下ろし、カラスに笑いかけた。


・・・・・・っ・・・

その、笑顔はズルイよ。

そんなに、無邪気に、優しそうに、笑わないでよ。
カラスに、妬いちゃうじゃん・・・。


「クロ、良かったな。ほら、挨拶しろよ。」

挨拶・・・?


久流君は柔らかい表情のままカラスに言い、カラスは・・・なんと・・・
ぺこんと、お辞儀をした。

私はパッと目を見開く。

お、お辞儀!?


口をパクパクさせていると、久流君が私にを、いたって生真面目な顔で見た。

「比佐乃は?」

「へ?」

驚きがまだ消えず、間抜けな声を出せば、久流君が眉をひそめた。


「挨拶。クロはしたけど・・・比佐乃は、しないわけ?」