変わり者同盟

「比佐乃。」

背後から、今まさに話している人の声がした。

私も含め、全員が目を見開いた。

く、久流君っ!?


私達の困惑には無視・・・いや、気付かずに、久流君は淡々と、実にクールに私に要望を言ってきた。


「腹減ったから、弁当頂戴。」

・・・・・・早くないですかね?


さすがは久流君。なんてマイペースなんだ。

この変な雰囲気の中、さらりとお弁当のことを言うなんて。
しかもまだ、一時間目が終わったばかりなのに、だ。


でも、私にとってはかなりタイミングがいい。
とりあえず、この状況から抜け出せるのだから。

私はポカンとしているすももちゃん達から即座に離れ、ロッカーに入っている鞄からお弁当を取り出した。


早足でまた戻ってきて、久流君にお弁当箱を渡す。

お弁当は今のところ、抹茶色の地に黄色の水滴の柄がはいってる、風呂敷に包まれている。


久流君は私からお弁当を受け取ると、嬉しそうに微笑んだ。

「サンキュ、比佐乃。」


――ドキッ

本当に、その微笑は反則でしょう。


視界の端に捕らえたすももちゃんが・・・いや、菜子ちゃんも美沙ちゃんも、頬を赤く染めていた。


・・・・・もやっ

なんだか、心の中が灰色の雨雲で支配されたかのように、もやもや、する。


なんで、だろう。

やっぱり久流君の笑顔は破壊力抜群で、反則だってことがよく分かったのに。
それなのに、なんでもやもやするんだろう?


心の中で首を傾げた時、手首を掴まれた。

細くて綺麗で・・・固い、ごつごつしたような、“男の子の指”に。