後ろからは寝息が聞こえる。久流君は寝ているんだと思う。

けれど、古文の授業ではけっこうの人達がうとうとしているから、そんなに珍しくもない。

といっても、久流君のように寝息が聞こえるほどぐっすり寝ちゃう人はほとんどいないんだけど。


窓の外を見た。

私達1年生は、3階。綺麗な青空がよく見えた。


そしてフッと思い出した。
今日は、私の誕生日だったんだっけ・・・。


「ハッピーバースデイ、冬香。」

誰にも聞こえないように、小さく小さく呟いた。
16歳、おめでとう。


すももちゃん達からは、誕生日プレゼントなんて貰ってない。
期待した方が、おかしかったのかもしれない。


でも、いいや。
“変わり者同盟”という、素敵な素敵な同盟が結ばれたから。


「ふふっ」

思わず笑みがこぼれた。


こんなに嬉しい誕生日は、初めてかも。

だって、変わり者同盟成立の日が、私の誕生日なんだよ?
嬉しくないほうがおかしい。


久流君は、私の憧れで、遠い遠い存在。
そう、思っていたけれど。

・・・近づけるかな。
いつだって飄々として、他人に左右されない彼に。

・・・・・・近づき、たい。


憧れていた彼に、今初めて。

近づきたいと・・・仲良くなりたいと思った。


今までは、そう思うことすらできなかったのに。


・・・ほんの少し。

私、前を向くことができたのかな?


私は心の中で、澄み渡った青空に向かって問いかけてみた。