変わり者同盟

知らなかった。

久流君の笑顔って、こんなに、こんなに、柔らかくって、温かくって、無邪気なんだ。

目じりが垂れたその笑顔は、“狼”なんかじゃなくて“子犬”みたいだった。


「・・・・・・っ///・・・」


ずるい。

その笑顔は、ずるいよ。

何にも、言えなくなっちゃうもん。



久流君はひとしきり笑った後、柔らかな微笑みを湛えたまま、私を真っ直ぐに見た。

また、彼の黒い瞳に、私の視線は絡め取られる。


「比佐乃。今日は“いつも通り”なんかじゃねぇよ。」

優しい声音。だけと、キッパリと久流君は断言する。


“いつも通り”なんかじゃない・・・?

首を傾げた私に、楽しそうに久流君は言った。

「今日は“変わり者同盟”成立の日だからな。」


“変わり者同盟”?

何それ、と考え始めた私に、久流君は説明してくれた。あまりに、久流君らしいおかしな同盟について。


「俺と比佐乃の同盟。比佐乃、変わってるし、俺も変わってるってよく言われるからさ。

変わり者同士親睦を深めることが目的。な、いいだろ?」


・・・・・・え、えぇ!?

私は心の中で叫んだ。

し、親睦を深める!?私と久流君が!?なんて恐れ多いっ!!!


私の脳内を知ってか知らずか、久流君は何も言わない私の顔を覗きこんだ。

背の高い久流君から見上げられるのは、本当に心臓が壊れそう。

心臓がピンチなのは、本日2回目。


「嫌か?」

心配そうに聞いてくる久流君に、胸がきゅんってした。