菜子ちゃんはいつだって最後の最後まで追求する。
だから、いつだって締切日近くはそんな返事だけど、いつだって菜子ちゃんは考え考え答えるのだ。
自分の絵に対して、もの凄く真剣だからだと思う。
私は、菜子ちゃんを見習うべく、また出そうになったため息を飲み込む。
じっと絵を見つめ、頭の中から久流君の顔を追い出す。
結局私のお弁当のおかずをほとんど食べてしまった後、久流君が言った言葉を思い出さないようにする。
・・・椿の赤は、もっと鮮やかな気がする。リアルさが出てない。
『なぁ、比佐乃。』
・・・あと、瓦はもっと境界線をハッキリ描かなくちゃ。重圧感も出てない。
『お前の弁当、凄い美味いからさ。』
・・・あと、雪。全然雪のふわっとした感じとか儚さとかが出てない。
『俺のも、作ってきてくれないか?』
・・・あと、私。バッチリ思い出してるんじゃない。
私は、久流君の声を頭の中から振り飛ばすように、ぶんぶん頭を振った。
絵に集中。絵に集中。絵に集中。
乾かしたいんなら、頑張らなきゃいけないの、分かってるでしょ?
絵に集中。絵に集中。絵に集中。
『お前の弁当、凄い美味いからさ。』
・・・絵に集中っ!
久流君のお弁当のおかず、考えない!
卵焼き入れてもいいかなとか、考えない!
お弁当箱どうしよっかなとか、考えない!
私の心臓、ドキドキしちゃ駄目っ!
絵に集中っ!!!
私は呪文のように“絵に集中っ!!!”と頭の中で唱え続けたけれど、集中なんかできなかった。
だから、いつだって締切日近くはそんな返事だけど、いつだって菜子ちゃんは考え考え答えるのだ。
自分の絵に対して、もの凄く真剣だからだと思う。
私は、菜子ちゃんを見習うべく、また出そうになったため息を飲み込む。
じっと絵を見つめ、頭の中から久流君の顔を追い出す。
結局私のお弁当のおかずをほとんど食べてしまった後、久流君が言った言葉を思い出さないようにする。
・・・椿の赤は、もっと鮮やかな気がする。リアルさが出てない。
『なぁ、比佐乃。』
・・・あと、瓦はもっと境界線をハッキリ描かなくちゃ。重圧感も出てない。
『お前の弁当、凄い美味いからさ。』
・・・あと、雪。全然雪のふわっとした感じとか儚さとかが出てない。
『俺のも、作ってきてくれないか?』
・・・あと、私。バッチリ思い出してるんじゃない。
私は、久流君の声を頭の中から振り飛ばすように、ぶんぶん頭を振った。
絵に集中。絵に集中。絵に集中。
乾かしたいんなら、頑張らなきゃいけないの、分かってるでしょ?
絵に集中。絵に集中。絵に集中。
『お前の弁当、凄い美味いからさ。』
・・・絵に集中っ!
久流君のお弁当のおかず、考えない!
卵焼き入れてもいいかなとか、考えない!
お弁当箱どうしよっかなとか、考えない!
私の心臓、ドキドキしちゃ駄目っ!
絵に集中っ!!!
私は呪文のように“絵に集中っ!!!”と頭の中で唱え続けたけれど、集中なんかできなかった。



